働くってなんじゃろな??

「人はなぜ働くか」

 この問いはいつの時代にもなされる。そして、多くの人が相当、関心をもつテーマでもある。「人はなぜ働くか?」まず、その意味について簡単に整理しておきたい(図を参照)。それは次の2つの側面から捉えることができる。まずは「物理的・経済的な報酬」という側面。もう一つは「社会的・心理的・道徳的な報酬(自己実現、自己成長、社会とのつながり、他者からの承認、社会貢献)」(山村2011)という側面である。前者は働く時間、給与面、待遇面、社会保険関係など、これはハードの面だ。そして、もう一方は、働きがい、モチベーション、人との関わり、自己実現といったソフトの面である。

 人は、仕事が「おもしろい!」、「つらい」という感情を持つとき、必ずそのどちらか、もしくは両方が関連する(でも、実は正しくは片方が起因して、どちらもになっていくのだが)。

 

 働く意味から考えた際、ディーセント・ワークが達成されていない状態というのは、上で説明した2点をふまえて「労働者性のあり方(給料面、雇用主の義務、労働環境面、社会保険の適用等)」と「労働そのもののあり方(一人一人が役割をもった働きがいのある人間らしい仕事)」といった側面から考えることができる。

 働くことがきついとなっている時、人はこの両方がごちゃ混ぜになって、「働くことはもう嫌だ!」となっている場合が多い。そんな時、そのどちらに問題があるのかから考えると整理しやすいと思う。「労働者性のあり方」が問題なのか、それとも「労働のあり方」が問題なのか。

 今、日本で進められている働き方改革は主に「労働者性のあり方」にメスを入れていると考えることができる。それは生きることも含めて大切で不可欠な要素。ただし、本来のディーセント・ワークという視点から考えると、一人一人が役割をもった働きがいのある人間らしい仕事といった「労働のあり方」も、長く働くという意味においてとても大切な要素なのである。前者は想像がつきやすいし、数値的にも表しやすい。つまり、整えると決めて行動を起こせば、ある程度、整いやすいということだ。でも、後者はわかりづらいし、見えづらい。数値化もしづらい。ただし、人のモチベーションに直接関わるところはこちらなのだ。

 

次回からは、「労働のあり方」について詳しく見ていきたいと思う。

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【文献】

Kiernan, W. E. and Knutson, K.(1990) Quality of Work Life, Schalock,R. L. ed. Quality of life: Perspective and issues, American Association on Mental Retardation,101-114. (=1994, 三谷嘉明・岩崎正子訳『知的障害・発達障害を持つ人のQOL ノーマライゼーションを超えて-』医歯薬出版, 143-161)

山村りつ(2011)『精神障害者のための効果的就労支援モデルと制度-モデルに基づく制度のあり方-』ミネルヴァ書房